処理能力の追い付かない下水システムの交換

150年前のロンドンの下水道は、現在の800万人の半分にも満たない人口を想定して整備されたものです。排出される廃水量は処理能力を上回り、毎年何百万トンもの未処理の汚水が川に流出していました。Costain、VINCI Construction Grands Projets、Bachy Soletancheの共同事業（CVB JV）は、このトンネルの東区画の設計、建設、交換を担当しました。これは総工費8億5,000万英ポンドで、ロンドン中心部の地下70メートルに位置する全長10キロメートルのトンネル工事と6箇所のシャフトが含まれます。このプロジェクトには、12の設計分野にわたる多数のサプライチェーン企業と関係者が参加し、いずれも厳しい日程の制約がある中、近隣の歴史的建造物や住民に害を及ぼすことなく作業を進める必要がありました。CVB JVには、従来の建設工法の限界を超えて、この大規模な下水設備を提供するための統合デジタル技術が必要でした。

建設モデリングによる課題の解決

CVB JVは、コネクトデータ環境を構築し、4D建設モデリングと共同計画によって、プロジェクトの課題を解決するとともに、エンジニアリングおよび建設の管理を合理化しました。また、3Dモデルを構築して建設プログラムにリンクさせ、30以上のインテリジェントな4Dモデルを作成し、共通プラットフォームを用いて、組織的な多分野型モデリング、およびあらゆる建設情報の保管を行いました。Bentleyの統合技術を活かしたデジタルソリューションにより、建設作業の進展を示す視覚的シークエンスを作成しました。

干渉の防止と下請け業者の管理

SYNCHRO 4Dで4Dモデリングを行い、共同計画およびデジタル建設管理を円滑に進めることにより、効率的で安全、かつ持続可能な建設作業が実現しました。OpenBuildings Designerの相互運用性を活かした3Dオーサリング機能により、さまざまなファイル形式のサプライチェーンモデルをProjectWiseプラットフォーム上の調整済みモデルに統合しました。SYNCHRO 4Dを使用することで、現場チームは簡単にモデルにアクセスして確認、キーワードや検索条件を指定してデータベースに問い合わせを行い、複雑な建設工事に最適な建設方法を確実に解析することができました。Bentleyの4Dデジタル技術ソリューションにより、複数の請負業者が過密な現場で共同作業を行う中、潜在的な干渉を解決し、並行作業を効果的に管理できました。

テムズ川の水質の回復

Bentleyのソリューションにより、予想される人口増加も考慮して、汚染を軽減できる設計を実現できました。CVB JVは、毎週の共同計画会議で4D建設モデルを使用することにより、複雑な建設作業の進展を促進し日程を前倒しすることができ、プロジェクト時間を大幅に節約しました。4D建設モデルで現場解析の改善、建設性の向上、既存建築物の損傷の回避、変更の排除を図ることにより、本建設プログラムは90日以上短縮されました。これは、直接費30万英ポンド、間接費100万英ポンドの削減に相当します。
また、Bentleyの共同作業型デジタルアプリケーションを使用して建設プロセスを正確に可視化し、現場作業者と関係者の間のコミュニケーションと相互理解を改善することにより、ワークフロー、意思決定、承認プロセスを効率化しました。2025年の完成時には、テムズ川の水質は初期の下水道システムの建設以来
観測されていないレベルに戻ると予想されています。